November 24, 2016

レポート『東京フィルメックス』

11月19日から27日までの9日間、有楽町朝日ホールとTOHOシネマズ日劇にて開催された東京フィルメックスは、その上映作品のクオリティの高さから、映画ファンや業界関係者からの注目度の高い「アジアの映画作家を育てる国際映画祭」です。 その栄えあるコンペティション作品に選ばれた『仁光の受難』は、11月23日(祝・水)有楽町朝日ホールにて、ついにジャパンプレミア上映を果たしました! バンクーバーと釜山を経て三つ目の映画祭であるにも関わらず、監督は上映の24時間前から緊張の極地! やはり自国での初上映は特別な意味を持っていたようです。
開場では、主人公・仁光の陽気な兄弟子、托陽役の村上仁史さんが僧衣でお客さまを迎えます。600席以上ある朝日ホールを埋め尽くすほど、たくさんの方が来て下さいました!

まずは舞台挨拶。監督・庭月野議啓、主人公・仁光役の辻岡正人さん、浪人・勘蔵役の岩橋ヒデタカさん、能面の女役の有元由妃乃さんが登壇します。
緊張でガチガチな監督のガチガチな挨拶で始まった時はどうなることかと思いましたが、辻岡さんの「普段モテないのにモテまくる役やってすみません!」の土下座で一気に緊張がほぐれましたね。
司会の方にいくつか質問を頂いたので、その回答を簡潔にまとめてみました。(やはり弱気な監督と強気の主演の構図……)

司会:庭月野監督、ジャパンプレミアに臨む今の気持ちは?
庭月野:正直めちゃくちゃ怖いです。海外よりも日本の観客の皆さんの方が日本文化に詳しいので、ディティールの誤魔化しが効かない。本日はお手柔らかにお願いします。
司会:辻岡さん、撮影中の受難エピソードなどはありますか?
辻岡:辛い思い出しかない(笑) 真冬の撮影でしたし、滝に打たれるシーンの撮影で脳震盪を起こしてしまったり、ずっと剃髪していたので「おつとめご苦労様です…」と勘違いされたり。でもそうした苦労の末に出来た素晴らしい映画なので、自主制作であることを差し引いて、ひとつの娯楽作品として厳しい目で観て頂いていいと思っています。
司会:岩橋さんの浪人・勘蔵は凄みのある役でしたが、演じる上で意識したことは?
岩橋:当時は10キロの減量をして臨みまして、太っている今と比べると30キロも痩せてました。迫力を出すために、毎日ウィダーインゼリーだけを食べて体型を維持してましたね。
司会:有元さんは一人で何役も演じられたとお聞きしましたが?
有元:メインの役では能面を被っていて顔を見せなかったので、それ意外にエキストラを含めて6役くらいやっています。(「低予算のため、少人数で回していたので…」と監督から補足)良かったら探してみて下さい(笑)
司会:では最後に、庭月野監督から一言お願いします。
庭月野:この映画はひとつの『怪談話』です。落語家さんがする怪談話のように、時に神妙な面持ちで、時に面白おかしく、世にも不思議な話を、ひとつお話致しましょうと、そういう趣向の物語です。オトナの昔話を是非楽しんで下さい。

そして上映が始まりました。普段日本人は比較的静かに映画を見る傾向にあるように思っていましたが、笑いどころではしっかり笑いが起こっていましたね。スタッフ・キャスト一同、感慨深くジャパンプレミアの様子を見守っていました。

上映後のQ&Aでは、フィルメックス・ディレクターの林加奈子さんの進行で、監督が作品について語ります。 まずは林さんに「こんなにも真面目にふざけている映画は本当に素敵で、本気の映画だと思います」というありがたいお言葉を頂きました。 いくつかの質問と監督の回答はちょっと長いので、Q&Aの様子を収められた東京フィルメックスの公式動画をご覧頂ければと思います。
動画中にはない場面で、「浮世絵アニメーションなどは海外の人にウケるだろうという下心があったんですか?」という質問に「下心だらけですよ」と答えた時は開場に笑いが起きましたね。 浪人・勘蔵というキャラクターは初期のプロットになかった役で、外国人ウケを狙ってサムライを出そうという下心から追加していたのです。
また、「こういう時代劇を作ろうと思った時にインスパイアされた映画などあるんですか?」という質問に「もともと京極夏彦先生の小説が凄く好きで、自分もこういう創作怪談を作りたいなと思ったのがキッカケで…」と答えている時、満面の笑みで頷いている方が何人かいらっしゃったのですが、恐らく同じように京極夏彦ファンの方だったのでしょうね。
最後に林さんに「庭月野さんは映画の明るい未来を担ってくれる方だと私は信じています」と仰って頂いたこと、そして、たくさんの観客の皆さんに盛大な拍手を頂いたことは、監督にとって大きな自信に繋がったことでしょう。
上映後もロビーでたくさんの方にお声をかけて頂き、サインや写真に対応していた監督でしたが、ようやく緊張から解放されたようで晴れ晴れとした表情をしていました。

まだまだこれから劇場公開に向けて頑張って行かなければなりません。海外エージェントとの打ち合わせのために、監督は打ち上げもそこそこに途中で引き上げて行きました。 これからも続く海外の映画祭や日本での劇場公開で多くの方々に『仁光の受難』を届けるため、我々の闘いは続きます!

(写真提供:東京フィルメックス スタッフ 村田麻由美さま 穴田香織さま)